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働き方改革後の人事評価について

働き方改革後の人事評価について

今回のテーマは、「働き方改革後の人事評価について」です。

2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」にもとづき、時間外労働の上限規制、有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金(雇用形態に関わらない公正な待遇の確保)など、関連の諸制度が順次適用されていきました。

それとともに、労務管理の複雑化を実感することが増えているのではないでしょうか。

働き方改革によって、少子高齢化で加速する人手不足を踏まえ、公正・公平な雇用のもとでの柔軟な働き方が可能になりました。

社会に潜在する労働力人口を幅広く呼び込み、仕事の担い手を確保する流れが生まれています。

また、雇用の現実問題においては、長期に渡り人手不足が続くため従来の「働かせ放題」の正社員雇用に拘らず、働き方に何らかの制約が伴う従業員の雇用を受け入れざるを得ないと思います。

人事評価の在り方においても、正社員を前提とした一律の基準やプロセスによって成績考課・昇給昇格を運用するのではなく、多様な人材の雇用と各自の生き方、働き方に応じた変化が求められています。

必ずしも新しい人事評価の枠組みではありませんが、以下の制度について概要をご紹介させていただきます。

1.目標管理制度(MBO)
2.業績目標制度(OKR)
3.働き方改革後の留意点

1.目標管理制度(MBO)

目標管理制度(Management by Objectives, MBO)は、国内で従業員数300人未満の企業に限っても、8割以上が導入している定番の制度です。

成果主義にもとづいた人事評価が浸透する以前、この制度は従業員一人ひとりの目標設定を通じて主体的な動機づけを図り、そうした取組みの総和として企業の成長を実現するという仕組みでした。

現在に至って、従業員が各自の重点目標(どのようなことを、いつまでに、どのくらいまで、どのようにして)を設定したうえで、期初に上長との間で合意・共有する、期末には目標達成度合いの評価を受けるというサイクルを繰り返すようになりました。

制度運用がこなれてくると、上長による指導を通じて、各自の目標を全社や部門の目標と連携させる、個人の専門知識やスキルの向上を目標に組み込む、優先順位の高い目標についてウェイト付けを行うなど、目標設定を工夫するようになります。

基幹職層の正社員に対しては、事業成長のための戦略的な目標、社内組織を横断した目標などを引き出すこと、他方で契約社員、パートタイマー、嘱託社員に対しては、各自の意識、働き方をすくい上げつつ、所属部門の目標設定と調整をすることが理想です。

ただし、成果主義による人事評価のため、目標管理制度を成績考課・昇給昇格と一体的に運用する、目標達成度合いによって賞与支給額を決定する、などの状況になれば、当然ながら人間臭く二律背反の問題が出てくることがあります。

具体的には、従業員が目標のレベルを引き下げる、目標の達成基準を曖昧にする、目標未達を外部環境のせいにする、会社側も賃金原資の枠内で結果評価を相対化するなど、という動きが入り混じることになります。

客観的で合理的な目標の設定を徹底することによって、制度の形骸化に陥らないよう、組織全体でモラルを維持しなければなりません。

2.業績目標制度(OKR)

目標管理制度のように従業員個人の目標設定と取組みによって業績向上を実現するのではなく、会社全体または事業部門の業績目標と目標達成の指標のもとで、従業員個々の目標設定を要求する仕組みもあります。

目標管理制度よりも新しい枠組みであり、日本語の名称は未だ確定していないと思いますが、仮に「業績目標制度」(Objectives and Key results, OKR)と呼称します。

この制度では、経営者と事業部門トップの間で、一定の期間(基本は四半期)を区切り、業績目標(Objectives)と目標達成の指標(Key results)を合意し、事業部門トップが管掌する組織全体の取組みを展開します。

ある事業部門の業績目標を第1四半期の売上高とすれば、開発、生産、販売などを担う管理職層に対して担当部門の目標と指標を設定させ、管理職層は自らの部門に所属する基幹職層、一般職に対してはさらに細分化した目標と指標を設定させます。

上位目標にもとづいて、滝が流れ落ちる(カスケード)かのように、全レベルの職層で目標達成に向けた取組みが行き届くという状態になります。

業績目標制度は、基本的に大胆で挑戦的な目標を設定する反面、常に目標必達を要求するのではなく、各職層の人事評価においては、目標達成に向けられた個人の努力、貢献度合いを評価するという考え方をします。

目標管理制度と異なるのは、評価者の上長と被評価側の従業員が目標達成に向けた努力、貢献を互いに認め合うこと、すくい上げることに焦点を置くため、ある意味では間接的な余白を残した人事評価が行われます。

目標達成の指標(Key results)についても単一ではなく複数(基本的には3つ)の指標を設定し、目標達成に向けた取組みを促すことになります。

トップの目標と連携して各部門で設定された目標達成の指標は幅広く、業績向上に向かうエネルギーは大きなものであることは想像できます。

3.働き方改革後の留意点

繰り返しになりますが、働き方改革は、人事評価の在り方においても、正社員を前提とした一律の基準やプロセスによって成績考課・昇給昇格などを運用するのではなく、多様な人材の雇用と各自の生き方、働き方に応じた変化を求めているはずです。

本来的には、従業員一人ひとりで、生き方の個性によって仕事への心構えが異なり、働き方によって組織、事業、業務に関する視点や関心も異なります。

契約社員の場合であれば、地域限定、時差勤務やテレワークで働く。パートタイマー、嘱託社員の場合であれば、担当業務が制限され、シフト勤務で働く。あるいは副業・兼業を持つ場合の兼ね合いなど、人事評価で配慮すべき要素の複雑化は避けられません。

基幹職層の正社員であっても、残業時間を規制された場合の働き方は違ってきます。

残業時間の枠を使い切ったときに、目前のタスクを完遂できるか、日程延期を調整できるか、上長や同僚に協力を求められるか、などの現実問題に直面します。

そのため、目標管理制度、業務目標制度のいずれの枠組みにおいても、多様な人材の雇用と各自の生き方、働き方を前提として、目標の透明性を確保し、目標の共通理解(アライメント)を重視しつつ、目標達成への取組みを促すことに留意しなければなりません。

また、人事評価の前提として、目標に挑戦できる組織を作るための組織再編、賃金制度、就業規則などについても見直しが必要になることもあります。

本号のRIMONO Letterでは、概要のみの掲載となります。

詳細のお問い合わせ、また目標管理制度や業績目標制度について御社が可能性を見出されたときには、ぜひ制度導入・運営サポートをRIMONOへご相談ください。

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