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自動車運転の時間管理

自動車運転の時間管理

本年のRIMONOメルマガ3月号でご案内したとおり、これまで働き方改革関連法の適用が猶予されてきた「建設業および運送業に対する時間外労働の上限規制」が、来年4月より始まります。

自動車運転による時間外労働の限度時間は、原則として1か月45時間・1年360時間とされます。特別条項付きの労使協定を結ぶ場合であっても、1年960時間以内としなければなりません。

本号では、運送会社が運行するトラックやバスなどの事業用自動車(緑ナンバー)を除き、一般的な事業会社での自家用自動車(白ナンバー)*を対象とした、自動車運転の時間管理についてご紹介します。
* 自社工場から製品を配送するトラック、現場へ作業者や資材を運搬するワンボックス、得意先の訪問営業を行う軽ワゴンなど。

自動車運転の業務は、運転走行のほかに車両の点検・整備、荷扱い(積込み・積下し)、荷待ち(待機)などを伴うため、拘束時間が長くなります。且つ、大半の業務が事業所を離れて行われるため、時間管理が容易でないことは周知のとおりです。

また、走行途中で渋滞・事故・故障・災害などに遭遇して予定がずれ込むこともあれば、 適切な休憩(トイレ、食事や仮眠も含む)によって疲労回復を図る必要が発生することもあります。時間の合理化のみを追求する前に、まずは安全運転を続けなければなりません。

以下では、「改善基準告示」の再確認、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)、デジタコ・ドラレコの活用についてご案内させていただきます。

  1. 「改善基準告示」
  2. 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)
  3. デジタコ・ドラレコの活用

1. 「改善基準告示」

事業所を出発し、目的地で業務を遂行し、事業所に帰着するまで終了しないため、自動車運転には必然的に、業務上途中で止められないという特性があります。こうした業務の特性を踏まえ、厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」が定められています。

改善基準告示は、労働基準法第9条にいわれる「労働者で自動車運転に主として従事する時間が年間総労働時間の半分を超えることが見込まれる場合」を対象としています。

運送会社だけではなく、比較的近・中距離を走行する自家用自動車(白ナンバー)の自動車運転者が勤務する事業会社全体に適用されます。同告示では自動車運転の時間管理を行う基本として、始業時刻から終業時刻まで自動車運転者が業務上拘束される労働時間と休憩時間の合計を「拘束時間」と考えます。

拘束時間 = 労働時間(運転、点検・整備、荷扱い、荷待ち) + 休憩時間

そのうえで自動車運転者の1日を「始業時刻から起算した24時間」と捉えることで、1日の拘束時間は原則として13時間以内、延長する場合でも15時間*を上限とします。
* 宿泊を伴う長距離貨物運送では、1週間に2回に限り、1日の拘束時間を16時間まで延長することができる。

自動車運転者が勤務終了後に睡眠を含む生活や疲労回復を図るための時間を、「休息期間」(休憩時間ではない)といいます。休息期間は、次の勤務までの間に継続11時間以上確保することを基本とし、継続9時間を下回ってはならないとされています。

休息期間に加えて、一般労働者と同様に休日(24時間の連続した時間)を確保することが求められ、休日労働の回数は2週間に1回が限度とされています。

以上が改善基準の基本的なポイントですが、この他にも

  • ・1か月の拘束時間(原則として284時間以内、労使協定により1年の拘束時間が 3,400時間を越えない範囲で年6回まで、最大310時間まで延長可)
  • ・1年の拘束時間(原則として3,300時間以内)
  • ・2日を平均した1日の運転時間(9時間以内)
  • ・2週間を平均した1週間の運転時間(44時間以内)
  • ・連続運転時間(4時間以内)

などのきめ細かな規定があります。

厚生労働省「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/content/2023_Pamphlet_T.pdf

2. 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)

拘束時間の本体にあたる労働時間(運転、点検・整備、荷扱い、荷待ち)は、労働基準法によって法定労働・時間外労働・休日労働に区分されますが、自動車運転者に時間外労働・休日労働をさせる場合は、当然ながら、「時間外労働・休日労働に関する協定書(36協定)」を作成し、届出する必要があります。

労働時間(運転、点検・整備、荷扱い、荷待ち) = 法定労働 + 時間外労働 + 休日労働

冒頭で述べたように、2023年4月1日から自動車運転での時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間とされ、特別条項付きの労使協定を結ぶ場合であっても年960時間以内としなければなりません。

とはいえ、一般事業・業務での時間外労働の上限規制(特別条項付き年720時間)に比べれば多少なりとも緩和されているほか、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回まで、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満であること、2〜6か月平均で月80時間以内であること、といった月単位での規制は適用されません。

改善基準告示は、法律ではなく厚生労働大臣告示であり、労働基準監督署の監督指導において違反が認められた場合は是正指導の対象となりますが、罰則はありません。ただし運送会社の場合は、道路運送法や貨物自動車運送事業法の重大な違反の疑いがあるとき、地方運輸支局へ通報される仕組みになっています。

他方で、厚生労働省の告示第323号によれば、自動車運転の業務での時間外労働と休日労働によって、改善基準告示に定められた1日についての最大拘束時間、1か月および1年についての拘束時間を超えてはならないとされています。

36協定届の提出にあたっては、時間外労働・休日労働に関する労使協定に、改善基準告示による拘束時間に関する内容を追加した労使協定書を添付提出することになります。

3. デジタコ・ドラレコの活用

前述した「改善基準告示」に即して自動車運転の適切な時間管理を行うためには、最新のデジタルツール、具体的にはデジタコ(運行記録計、デジタルタコメーター)、ドラレコ(ドライブレコーダー)などを活用することが必要になります。

自動車運転の業務に対して働き方改革関連法が適用猶予の状態であったのは、デジタルツールの製品開発や事業利用の普及を待っていたのかもしれません。事業所から出発した自動車がどのように動いているのか、動態を区切った時間の見える化が前提であるからです。

最新のデジタコでは、運転時間、作業・待機時間、休憩時間、休息期間をデータ記録するだけではなく、運行管理者が自動車運転の状況をリアルタイムで把握して必要な指示・連絡を出す、運転日報の自動作成により運転者の業務負担を軽減し業務改善・効率化の気付きを促す、勤怠システムへデータを流し込むなどといったことが可能になります。

自動車運転者は上長や先輩、同僚と車両・道路・客先の状況などについて情報交換を行う慣習が受け継がれているはずです。そうした労働習慣がある中で、自動車運転者がデジタコで「監視」されるようになると受け止めてしまうと、自動車運転の実態が改善基準からずれを引き起こすリスクが予見されます。

自動車運転者が所属する業務部などでは、自動車運転者と運行管理者がデジタコの使用目的や操作方法を覚え、機器のボタン操作を確実に行い、運転データを業務改善・効率化に活かすよう、日常的な協力関係を築き上げてゆく必要があると考えられます。

デジタコのデータ分析にもとづいて労働時間の管理にあたれば、出発前日に荷物を積み込んでおくか、到着時間にどの程度の余裕を見込むか、有料道路を利用するかなど、自動車運転業務を組み立てる手順や方法を運転者個人の判断に委ねることなく、職場レベルでの共通ルールの設定ができるようになるはずです。

参考資料

矢崎エナジーシステム ネットワーク型デジタルタコグラフ DTG7
https://www.otsuka-shokai.co.jp/erpnavi/product/dtg/

富士通 デジタルタコグラフ DTSシリーズ
https://www.otsuka-shokai.co.jp/erpnavi/product/dts/

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