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有期雇用の意味

有期雇用の意味

期間を定めて雇用する「有期雇用」は、パート・アルバイトやオペレーターなど、定型業務の働き手が必要であるといった大掴みの理由で採用されるかもしれませんが、現実的には様々な目的が織り込まれた有期雇用が活用されているケースが多いようです。有期雇用の働き手を受け入れるためには、採用の背景や目的を理解したうえで適切な運用を行うことが望ましいと言えます。

有期雇用の目的例

  •   ・最低賃金 ➤ 定型業務に当てる働き手の賃金を抑制する
  •   ・シフト制 ➤ 休日・早朝・深夜シフトの働き手を確保する
  •   ・代替要員 ➤ 育児休業や私傷病休職などによる欠員を補充する
  •   ・試用期間 ➤ 正規雇用の前に適性や能力を見極める
  •   ・イベント ➤ イベントやキャンペーンのキャストを募る

昨年4月、労働基準法第15条にもとづく労働条件の明示について、労働基準法施行規則が改正されました。これにより、有期雇用における契約期間や更新の上限、無期転換ルールなどの項目を明確に示すことが義務付けられています。例えば「契約期間は通算4年を上限とする」、「契約の更新回数は3回までとする」といった明示が必要となる他、新たに更新上限を設けたり短縮したりする場合は、その理由について説明することも求められます。

従来、有期雇用においては、労使双方が当初の契約期間を十分に意識しないまま契約更新を重ね、最終的に会社が雇用関係を一方的に打ち切ることで紛争に発展するという事例が後を絶ちませんでした。また、有期雇用の働き手が担当する業務内容や責任範囲が高度化しても、昇給が実施されず諸手当や賞与が支給されないなど、正社員との待遇に不合理な差が生じている実態も見受けられます。

こうした中で有期雇用を労使双方にとって利点を持つ雇用形態とするためには、有期雇用の働き手だからといって安易な対応を取るのではなく、働き手としての立場を尊重すること、採用目的に即した労働条件を整備すること、そして適切な雇用管理を行うことが重要です。本号では、改正後の労働基準法施行規則に基づいて、有期雇用のより良い活用方法のヒントをご案内させていただきます。

厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」 2024年9月
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001298245.pdf

【お伝えしたい内容】

1. 自動更新はNG

前述の通り、労使双方から明確な申し出がないまま有期雇用契約が自動的に更新されていることは少なくありません。しかし、そのような場合であっても、会社が一方的に契約更新を打ち切ることは原則としてできず、働き手の側に雇用継続への合理的な期待が認められる場合は、「雇止め(有期雇用の契約を更新しないこと)」が無効と判断される可能性があります。

「有期労働契約の締結、更新及び雇止め等に関する基準」(改正)では、1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合や3回以上更新されている場合など、雇止めに対する具体的な制限要件が定められています。

厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止め等に関する基準」 2024年4月改正
https://www.mhlw.go.jp/content/001249464.pdf

有期雇用契約は、1年以下の期間で区切り契約・更新を重ねるのが一般的な運用ですが、その取り扱いに対しては以下のような対応が求められます。

  • ・ 有期雇用の更新上限を定め、その旨を契約書に明記する
  • ・ 契約の更新にあたっての判断基準を契約書に明記する
  • ・ 更新上限を設定した理由について、被雇用者に対して説明を行う
  • ・ 雇止めを実施する場合は、契約期間満了の30日前までに予告する
  • ・ 雇止めの理由を明示する(単に「契約期間満了」という理由のみでは不十分とされる可能性があります。)

労働契約法では会社が労働者に対して優位な立場にあることを踏まえ、労働者が意に反して長期間拘束されることのないよう、有期雇用契約の上限を原則3年(専門的知識等を有する労働者は5年)としています。一方で、会社側は経営状況の悪化などの止むを得ない事由がある場合を除き、有期雇用契約の期間中に一方的に解雇することは認められておらず、有期雇用の安定性が確保されるような制限が設けられています。

2. 試用期間の代替

正社員の中途採用に際して応募者の適性を評価・判断するために、敢えて有期雇用契約を選択する場合があります。応募者の資質や経歴が良好であるものの、実際の業務において期待通りの仕事ができるかどうかを見極めたいときや、人手不足の状況で止むを得ず採用基準を緩和せざるを得ないときなどが該当します。

本来であれば、就業規則に定められた試用期間を通じて中途採用者の適性を見極めることが望ましいのですが、現実的に言って充分な手間をかけられない事情も考えられ、正社員の処遇で採用しながらも、雇用期間を一旦数か月に限定するという運用がなされることがあります。

その際に、応募者からの辞退を懸念して「当面は有期雇用契約とするが、いずれは正社員として登用する可能性がある」などの期待を抱かせるような言動を添えるケースが散見されています。とはいえ、契約期間の途中で見切りをつけたいとなった場合であっても、一方的に解雇することはできず、試用期間に準じる対応として会社が期待する職務遂行レベルと現状とのギャップを明確に伝え、改善のための指導と機会を与えることが必要です。

結果として改善が見られなかった場合には、その評価を基に率直な話し合いの場を設けることで、本人が自ら退職を検討する猶予を持てるなど、紛争化のリスクを抑えることにつながります。その際には、契約更新の基準に照らして丁寧に対応する、資質や能力などを一方的に否定しないなど、有期雇用を円滑に終了させるための配慮が求められます。

3. 無期転換ルール

労働契約法第18条に定められた「無期転換ルール」とは、同一の使用者の下で有期労働契約が反復更新されて通算期間が5年を超えた場合に、労働者の申込みにより無期労働契約へ転換できる制度です。この無期転換によって雇用の安定が図られるのですが、正規雇用への転換ではないため、給与・諸手当・労働時間などの労働条件については、基本的に有期契約時の内容のまま引き継がれることが容認されています。

今回の労働基準法施行規則の改正によって、使用者は労働者へ無期転換ルールの内容を周知したうえで無期転換を申し込む機会があると知らせること、無期転換後の労働条件を予め書面で明示し労働者本人の意向を確認することなどが義務付けられるようになり、契約更新における手続きがより厳格化されました。そのため、使用者が無期転換ルールを認識しながら、これを回避する目的で雇止めを行うことは原則として許されません。

企業としては、有期雇用の導入目的に立ち返り、計画的な働き手の入れ替えや配置を進める必要があります。仮に、当初の期待を超えて成長し継続的な雇用が望ましいと判断される人材が現れた場合には、無期転換の申し込みを待たず、本人との合意の下で正規雇用へ転換することも検討に値するでしょう。

契約更新を重ねてゆくうちに、実質的には正社員と同等の業務内容や責任を労働者が担っている場合には、無期転換後の労働条件を一定程度引き上げる必要が生じる可能性があります。働き手に雇用形態の転換を納得して受け入れてもらうためにも、担当業務と労働条件のバランスには十分な配慮が必要となります。

厚生労働省「無期転換ルールのよくある質問(Q&A)」2024年12月
https://www.mhlw.go.jp/content/001360796.pdf

<インターンシップ>

大学生や専門学校生が、在学中に将来のキャリアを検討するための就業体験を行い、企業側も優秀な学生との接点を持ち将来的な採用につなげることを目的とする制度を、「インターンシップ」と呼びます。短期間の就業体験にとどまらず、数か月にわたって学生が企業の指揮命令のもとで補助的な業務に従事する場合には、実態に即して有期雇用契約を締結することもあります。

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