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中途採用を工夫する(3)

中途採用を工夫する(3)

本年初めの記事「中途採用を工夫する」および続編では、欠員補充、事業拡大、新規開拓などを目的とした、就業経験を持ち即戦力となり得る人材を円滑に採用するための手順についてお伝えしました。現在も働き手不足が続く中では、募集要項の作成から適性診断、前職調査、入社支援(オンボーディング)まで、採用前後の丁寧かつ慎重な対応が大切といえます。

リモノレター「中途採用を工夫する」2025.01.21
https://rimono.co.jp/2025/1/21/rimono_letter202501/

リモノレター「中途採用を工夫する(2)」2025.02.19
https://rimono.co.jp/2025/2/19/rimono_letter202502/

近年、大手企業による人員整理が一般化し、終身雇用や年功序列が崩れて雇用の流動化が進んでいます。また、若年層の間では柔軟な働き方や多様なキャリアを求める意識が高まり、転職への抵抗感が薄れつつある状況もうかがえます。とはいえ、他社で経験を積んだ優秀な人材と出会える確率が必ずしも高まっているわけでありません。

例えば、御社がスカウト転職を活用している場合、人材サービス会社に候補者の紹介が少ない理由を率直に尋ねるのも一つの方法です。その上で、自社の採用条件が転職市場の現状に合っているか、他社との競合で不利になっている点はないか、求職者に響く訴求ポイントをどう打ち出すかなど、それぞれの実情に合わせて見直すことも有効です。

東京ハローワーク_【東京】職業別有効求人・求職状況
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/kakushu_jouhou/chingin_toukei/tesuto/_121515.html

周知のとおり、大手企業による採用選考はますます高度化しており、人員整理後の採用においても優秀な人材を獲得することに余念がありません。中小企業において同様の採用選考を行うことは難しいとはいえ、本来であれば水準に達していない応募者を消去法で選ぶことは避けるべきです。

もっとも、現実には採用条件を緩和せざるを得ない場面もあります。慎重に採用した人材であっても、前職での経験を通じて形作られた価値観が新しい職場での適応を妨げ、結果的にミスマッチとなる場合があります。そうした際に、採用内定・試用期間・本採用後の各段階でどのような対応が妥当か、労働法上の解雇規制を踏まえつつご案内いたします。

【お伝えしたい内容】

1. 採用内定

採用選考で合格と判断した応募者であっても、即時入社を実現できない事情が生じる場合があります。会社側では社内の最終決裁が下りない、繁忙期で新人の受け入れに手が回らない、配属先の準備が遅れているなど、応募者側にも現職の円満退社の調整や業務引継ぎ、家庭の事情など、さまざまな理由により入社時期を調整せざるを得ないケースがあります。

即時入社とならないまま、せっかく確保できた合格者に辞退されてしまうことは、会社にとって大きな機会損失となります。そこで企業は採用内定の手続きを踏んで、合格者との間で労働条件の通知、内定承諾書の回収、近況報告、健康診断、研修受講といった入社までのやりとりを行います。

採用内定の通知は、応募者からの労働契約の申込みを会社が承諾したという意思表示となります。この際、健康状態の悪化・虚偽申告・非違行為などの内定取消事由を記載し、企業側が労働契約を解約できる権利を留保しておきます(「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれる)。採用内定にあたっては、曖昧な対応や不用意な発言で本人に期待を持たせることは避けなければなりません。

また、個別対応によるバラつきを防ぐため、就業規則に採用手続き・採用内定・内定取消のルールを定めておきます。内定取消は、会社が労働契約を一方的に解約する点で解雇と同じ行為になるため、労働契約法16条による解雇規制を踏まえ慎重に対応しなければなりません。内定取消の事由を説明しつつ、本人との話し合いにより合意解約を目指すことが現実的です。

一方で、本人から内定辞退を申し出る場合があります。これは労働者から労働契約の解約を申し入れる退職と同じ扱いとなるため、民法627条1項により、申し出から2週間経過することで成立します。会社が引き止めようとしても、労働法には内定辞退を規制する定めがなく、自体を拒むことはできません。この意味においては企業が比較的優位に立てるのは、採用選考の段階までであるといえます。

2. 試用期間

採用選考や採用内定の段階では分からなかったものの、実際には、職務経歴書から期待していたほどの実務能力が働き手に見られない —— こうした場合に対応するため、雇用契約書には必ず試用期間(一般的に3か月程度)を明記します。併せて就業規則には、試用期間を延長する場合や本採用としない事由についても定めておきます。

試用期間は、会社が雇用契約の解約権を留保するために設ける制度ですが、期間満了時に本採用とする一方で、解約する場合は解雇と同じ扱いになります。より長い見極め期間を設けたいときは、代わりに有期雇用契約を締結する方法もあります。ただし、その場合は契約満了によって自動的に本採用とはならず、また契約更新を行わない旨を明示して採用する必要があります。

試用期間の途中または満了時の解約には労働契約法16条による解雇規制が適用され、さらに労働基準法21条による解雇予告手当の支払いも必要になります。勤務態度不良や能力不足のほか、メンタルの不安定さが懸念される場合もあります。解約権の行使が視野に入る場合は、問題行動や注意指導について記録を残し、面談実施と注意指導書の交付を行います。

試用期間の満了間際での解約権を行使すると、紛争化するリスクが高まります。そのため期間途中で本採用できない理由を説明しつつ、試用期間を延長して挽回の機会を与えるという対応が考えられます。しかしながら、試用期間の延長は働き手を不安定な立場に置くため、就業規則に根拠を明記し本人の合意を得ることが前提です。

試用期間の延長を行っても、本採用を見送らざるを得ない事由が改善しないケースは少なくありません。むしろ本人に時間を与えることで、過度に圧迫せず自ら退職の意思を固めさせる効果を期待できます。実務能力に問題はなくても、例えば社風に合わないときなど延長期間中に本採用拒否の判断を決定付ける衝突が発生することもあります。

3. 本採用後

試用期間に上長や同僚が多少の違和感を覚えていても、せっかく入社したのだからという配慮から、なし崩し的に本採用としてしまうことがあります。しかし、本採用後にあらためて資質や適性に疑問が生じた場合、どのような対応が適切なのか、働き手が新しい職場に馴染もうとする柔軟な姿勢を示さない場合、改善の難易度が高まります。

勤務態度に対する注意指導や実務能力の不足を補う教育指導を行ってもすぐに改善されず、反抗的態度や言い訳の増加、仕事への意欲喪失、メンタル不調を理由に休職を繰り返すといった方向へ進むこともあります。他方で、事前準備が不十分なまま勤務成績不良を理由に解雇すれば、本人が不当解雇として争うリスクが伴います。

試用期間や延長期間中に本採用を迷う場合は注意指導の記録が重要でしたが、本採用後のミスマッチについても、職場の上長や同僚に理解と協力を求め一定期間をかけて注意指導を繰り返すことが望まれます。本人の業務状態が把握しにくい場合は、指導員をつけ、日報作成を指示する方法もあります。結果としては、本人を自主退職の方向へ導くことが現実的な対応といえます。

即戦力として採用する際、試用期間を設定しないこともあります。応募段階で本人からのアピールが強く、経験・知識・実務能力に期待して想定より高い報酬を提示したものの、入社後に自己流を押し通し協調性がない、役職を与えると部下に仕事を振って自分は動かない、他責傾向が強いなどの理由で職場になじまないことも少なくありません。

注意指導により改善点を伝えても受け入れてもらえない、また教育指導に時間や費用を投じることが合理的ではない場合は、高い報酬ゆえに降格や配置転換も難しく、退職勧奨が必要となることがあります。その際は、細かい欠点を挙げて自尊心を傷つけるのではなく、会社が期待する即戦力ではなかったことを率直に伝える対応が妥当といえます。

厚生労働省「適切な労務管理のポイント」(R6.4.1)
https://www.mhlw.go.jp/content/001244629.pdf

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