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週3日勤務の正社員

週3日勤務の正社員

コロナ禍以降、すでに数年以上にわたり人材不足が続く中、キャリア意識を持ち事業成長をしっかりと支えられる人材を獲得したいと考える企業は少なくないはずです。そのような場合の選択肢として、個人的な制約によって週5日フルタイムの正社員として就労できない人材を、短時間正社員として正規雇用するという方法があります。

30代を中心とした若年層では夫婦共働きが一般化していますが、フルタイム正社員同士の共働きは比較的少数です。夫が正社員であっても、妻は家庭や子育てを優先しつつ有期雇用のパートタイムで就労しているという実態があります。また大半の企業では、明確な理由を設けることなく、一見して分かりやすいこの組み合わせで働き手を受け入れています。

キャリアを継続しようという意欲があっても、子育てを優先したい、家族を介護したい、家業を手伝いたいなど、働く時間が制約される様々な事情があります。やむを得ず有期雇用のパートタイムを選択した場合、前職で身に付けたスキルを生かせず、定型業務の割当てに限定されてしまうことが多く、相対的に給料や手当も低くなる状況に置かれます。

意欲や能力を持ちながらも、働く時間が限られている人材をいかに獲得すべきでしょうか。例えば、週3日勤務の正社員に働く時間の長さに関わらず成果を求め期待に応えられるだけの資質を重視する、時間当たりの生産性や力量を基準とした評価によって昇格・昇給を実施するといった仕組みです。

本号では、個人のライフステージが変化しても短時間正社員として働き続けることにより、人材の採用・定着という課題を解決するためのヒントを探ります。短時間正社員の新規採用だけでなく、在籍している正社員から短時間正社員への転換を含めて、仕事の割り振り・待遇の決め方・キャリア形成に向けた配慮などが必要です。

参考:厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/tayou/tanjikan/outline/

【お伝えしたい内容】

1. 業務分担

短時間正社員の働き方は、1日の所定勤務時間が少ない「短時間勤務」と、1週間の所定労働日数が少ない「週休3日制」、またはその組み合わせ(例えば、週休3日で1日6時間勤務など)に分けられます。しかしながら、どのパターンでも時間あたりの基本給はフルタイム正社員と同等であることが基本的な前提です。

そのうえで、短時間正社員にどのような仕事(職務の内容や責任の程度)を担ってもらうのか、フルタイム正社員とどのように連携・分担するのかといった役割への期待を明確にしなければなりません。短時間勤務であっても時差勤務(早番や遅番)、夜間あるいは休日勤務などのシフト制を適用することも可能です。

短時間正社員が日常的に残業する場合や、勤務時間内にこなせなかった業務を引き継ぐことでフルタイム正社員の負担が増えている場合には、両者の間で業務調整を頻繁に行うことが求められます。そのためには、取引先の理解も得たうえで円滑な業務遂行のための柔軟なチーム編成をすることも考えられます。

また、フルタイム正社員からは自部門の業務分担や他部門に移管すべき業務を整理し、業務調整を図るような動きが出てくるかもしれません。生産性を維持するためには、非同期型のビジネスチャットやファイル共有システムなど、組織と業務の実態に即したデジタルツールの導入が望ましいと言えます。

RIMONO Letter「残業を前提としない働き方」2024.09.19
https://rimono.co.jp/2024/09/19/rimono_letter202408-2/

一方で同じ職場にパートタイムの従業員が在籍している場合には、短時間正社員の役割を理解し、多様な働き方を認め合い互いに協力する関係づくりが大切です。短時間正社員の力量に応じて広範囲な職務や責任を与えるなど、正社員水準の役割期待を明確にすることで、公平感を確保する配慮も必要です。

2. 待遇の決め方

前述の通り、短時間正社員の基本給は、時間当たりではフルタイム正社員と同水準に設定し、諸手当・賞与・退職金の支給を含めた待遇を基本とします。例えば、役職手当や職務手当については短時間勤務に比例した金額を支給するのが合理的と言えますが、限られた時間の中で職責を十分果たせるのであれば手当を減額しない場合もあります。

賞与について、例えば勤務成績にもとづいた係数を基本給に乗じて算定する場合、短時間正社員とフルタイム正社員に同じ基準を適用したとしても、短時間正社員の基本給が勤務時間に応じて減額されていることから、賞与支給額は低くなります。とはいえ、勤務時間が短いことを理由に、勤務成績に低い評価をつけることは避けなければなりません。

短時間正社員の新規採用にあたって、社会保険の制度上は加入義務にあたらない場合であっても本人との合意にもとづき社会保険に加入させること、また、すでに在籍しているフルタイム正社員が短時間正社員へ転換する場合にも、社会保険を継続する措置を講じることが望ましいと言えます。

就業規則では、短時間正社員に対して業務の繁忙に応じた勤務時間や始業・終業時間の変更を行うこと、勤務日を振り替えるなどの柔軟な対応策を盛り込むこと、短時間正社員からフルタイム正社員への転換、フルタイム正社員から短時間正社員への転換および復帰の手続きを定めておくことなど、制度運営を見据えた工夫も大切です。

なお、フルタイム正社員から短時間正社員への転換において、育児・介護休業法による短時間勤務制度(3歳未満の子を養育するときの措置や、その後小学校就学前までの柔軟な働き方を実現するための措置)の要件に該当する正社員については、まず同制度の利用を優先し、短時間正社員への転換は一旦保留するという対応も検討する必要があります。

3. キャリア形成

短時間正社員を採用・定着させるためには、キャリア形成の可能性を示すことが重要な要素となります。短時間正社員がキャリアを意識し仕事に取り組めるように、人事管理の手間が増える側面はありますが、育児や介護などの環境変化に応じて勤務日数や勤務時間の増減を図ることが望ましいと言えます。

本人が業務の繁忙に応じて勤務日数や勤務時間を調整できるなどの柔軟性を持つときには、キャリア形成のために一定の範囲で担当分野以外の業務を経験させることが考えられます。可能な限り多くの仕事をこなす力量を身につけさせ、意欲と能力のある働き手の定着を促すような展開が期待できます。

同様に、フルタイム正社員と同様の教育研修の機会を付与し、職場内外での教育研修に参加させることや、短時間勤務との調整ができるよう研修期間を延長するなどの配慮を加えることで、将来的なキャリア形成を意識させることにつながります。

とくに専門的な知識や技術が必要な業務分野では、長期雇用を前提とした正社員を対象に教育研修を計画的に実施する体制が整備されているはずです。以前ご案内したスキルマップ(社員が業務を遂行する上で求められる力量を定義し、在籍社員の持つスキルを格付けして対照表形式でまとめた一覧表)の策定は、キャリア形成の道筋を示すうえでも有用と言えます。

RIMONO Letter 7月号「スキルマップ」2025.07.22
https://rimono.co.jp/2025/07/22/rimono_letter20250722/

短時間正社員が短時間勤務を選択している事由が解消された場合には、本人の希望に応じてキャリア形成の一環としてフルタイム勤務へ転換する、あるいは復帰することも可能とします。この場合には、フルタイム勤務への転換後の職務内容や責任の程度を明確にしておく必要があります。

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