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「残念な退職」に対応する

「残念な退職」に対応する

流通・サービス業や建設業などの労働集約型の中小企業では、より良い待遇を求めて退職を求める動きが、若年層を中心にして続いています。大手企業との賃金格差に加え、同業他社との賃上げ競争にも対応し切れない企業では、退職を惜しみながらも引き止められず働き手の安定的な確保が難しくなっています。

しかしながら、退職の理由は賃金格差だけとは限りません。仕事内容への不満、職場の人間関係、会社の安定性・将来性への不安、残業の多さや休日出勤の負担、将来の昇給が見込めないなど、転職サイトの影響を受けながらもさまざまな要因が重なって退職に至ることもあります。

得てして職場に適応し成果を上げていた社員は、業務の引き継ぎを丁寧に行って円満な形で退職していきます。一方、職場への適応に課題があった社員の中には、退職にあたって配慮を欠く行動で周囲を巻き込み、業務の引継ぎに非協力的であったり、インターネット上で会社への批判を発信したりするケースもあります。

こうした「残念な退職」は、職場に少なからず影響を及ぼします。例えば、残された社員の業務負担が増えるだけではなく、退職理由をめぐる憶測や不安が広がり職場の雰囲気が悪化することがあります。また、社外に否定的な情報が広まれば、採用活動や顧客・取引先との信頼関係にも影響を及ぼしかねません。

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そこで本号では、「残念な退職」が職場へ与える影響を、できる限り抑えるための対応として、不用意な紛争を防ぐための退職手続きのポイント、次の退職を防ぐための退職者アンケート(出口調査)の活用、さらに在籍社員の本音を把握するためのサーベイ・ツールについてご案内いたします。

【お伝えしたい内容】

1. 退職手続の徹底

社員から退職の申し出を受けた際は、退職理由について否定したり、引き留めたり、詮索したりはせず、まずは退職届の提出を求め退職の意思と退職日を明確にすることを優先します。そして、社会保険や雇用保険の資格喪失手続き、有休休暇の残日数の処理、退職金の支払い、退職証明書の交付などを滞りなく進めます。

退職を申し出た社員の対応に不安がある場合は、退職に関する確認書を取り交わし、退職日までに本人が行うべき事項を明確にしておく方法もあります。例えば、経費精算、貸与品(携帯電話、ユニフォーム、セキュリティカードなど)の返却、社宅や寮からの退去・原状回復などを求めなければならないはずです。

とりわけ情報管理には十分な注意が必要です。機密性の高い技術情報や顧客情報、個人情報の返還を徹底するとともに、インターネット上での不適切な情報発信を防ぐための対応も求められます。そのために、社内ネットワークへのアクセスを停止し、アプリやメールの利用を終了させるほか、個人で保管していた資料を回収・廃棄するなど情報管理を徹底します。

また、退職後に給与(残業代)の未払い請求やハラスメント被害の申告などが行われる可能性も考慮する必要があります。携帯電話やPCなどの貸与品は退職時の状態で一定期間保管し使い回しや初期化を避けること、アプリやメールの履歴、業務日報、勤怠記録(タイムカード)、外出・出張申請、経費精算、休暇申請、健康診断、面接指導、人事評価などの記録も保存しておくことが大切です。

退職手続きは優先順位が低くなりやすいため、人事・労務担当者による手続きが後回しになったり、退職者が貸与品を返却しないままになったりする場合があります。時間の経過とともに双方の信頼関係が損なわれると、感情的な対立に発展し、事実確認を含めた退職手続きをやり直さなければならないなど、予想以上の負担が生じるおそれがあります。

2. 出口調査の実施

社員から退職に至った事情を聞き取ることが出来たとしても、本人の主観を含め、その背景にはさまざまな要因が複雑に絡み合っていることが少なくありません。退職届には「一身上の理由による退職」と記載され、異業種へ転職して心機一転を図りたい、最終日まで責任を持って引き継ぎを行い、円満に退職したいと説明を受けていたとしても、それだけでは本当の退職理由が十分に見えてこない場合があります。

現実問題として、退職者から本音を聞き出すことは容易ではありません。退職前後に目立った問題行動が見られなくても、仕事内容への不満や人間関係での出来事、あるいは業務とは関係のない個人的な事情など、さまざまなきっかけが考えられます。退職に至るまでの過程で、会社として何か講じられる対策があったのではないかと感じる場合も多く、できる限り退職理由を把握しておきたいところです。

そのためには、退職時の出口調査を実施して退職者の率直な意見に耳を傾けることが大切です。組織的な課題が見えてきた場合には、同様の退職を防ぐための改善策を検討する必要があります。出口調査に際しては本人との関係性を考慮し、第三者を交えた面談を行う、部外秘で対話の機会を設ける、退職後に一定期間を置いて話を聞くなど、状況に応じた方法が考えられます。

出口調査で得られた内容を、年齢や性別、経歴、経済状況といった属性だけで判断してしまうことは避けるべきです。「若いから仕方がない」と片付けるのではなく、退職者がどのような成果を上げていたかという視点で振り返ることも大切です。特に成果を上げていた社員ほど、組織文化や価値観との一致を重視して転職を決意することがあります。

また、若年層の退職者の中にはインターネット上で会社や仕事に対する意見を発信することに抵抗感のない人もいます。元社員による働きがいや働きやすさに関する否定的な発信は、採用活動へ影響を及ぼす可能性があります。出口調査で気になる点があれば、事実確認を行うとともに会社として改善に取り組む姿勢を伝えます。こうした丁寧な対応によって退職後も良好な関係を維持し、感情的な情報発信の抑制につなげることが重要です。

3. オンライン・サーベイ

中小企業では、ハローワーク、求人情報サイト、人材紹介サービス、社員紹介(リファラル採用)などを通じて経験者や転職者を採用するケースが多く見られます。そして、採用情報を充実させていても、入社前の期待と入社後の現実との間に「思っていたのとは違う」というギャップが生じ、早期退職につながることが少なくありません。

しかし、採用時の見極めだけで社員が職場に適応・定着できるか判断することは容易ではありません。同業種の経験者であっても、社風になじめず仕事ぶりが期待に届かないことがある一方で、異業種からの転職者が高い意欲や能力を発揮し活躍することもあります。そのため、会社が社員を評価するだけではなく、社員自身が職場や仕事をどう受け止めているか、心身に変化はないか、退職につながる要因はないかを把握するためにオンライン・サーベイが活用されています。

例えば、入社前後の基本研修や現場配属後の実務研修について、その内容を十分に理解し業務に活かせているか、職場とのギャップを感じていないか、職場環境に課題はないかなどを確認し多面的な調査を行います。対面では話しづらい内容でも、オンライン形式であれば率直な意見を得やすく、理論的に設計されたサーベイによって回答率の向上も期待できます。

サーベイを実施する際は、その目的を社員に丁寧に説明すること、管理職の理解と協力を得ながら進めること、記名による回答には真摯に向き合い必要なフィードバックを行うことが重要です。人事評価を目的とした調査ではなく、社員一人ひとりを大切にし、より働きやすい職場づくりにつなげるための取り組みであることを伝えることで、職場への信頼や適応・定着へとつなげます。

回答内容から気になる課題が見受けられた場合は、個人面談の実施をおすすめします。一度の面談で本音を聞き出すことは難しいため、同じサーベイを定期的に実施し、解決策を講じながら変化を継続的に確認していくことが必要です。例えば、給与水準への不満の背景には、過重労働や過度な目標設定、評価制度への不満など、さまざまな要因が隠れている場合があります。原因を見極めた上で、実効性のある改善策を検討しなければなりません。

SmatHR「従業員サーベイ」
https://smarthr.jp/talent-management/function/survey/

ミイダス by PERSOL 「はたらきがいサーベイ」
https://corp.miidas.jp/landing/engagement_survey

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