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待遇格差の合理性を説明する

待遇格差の合理性を説明する

2026年10月からパートタイム・有期雇用労働法*施行規則が改正されます。パート・アルバイト、契約社員などの労働条件通知書に、同じ会社で働く正社員との待遇格差について説明を求めることができる旨を明示することが必要になります。同時に待遇格差の合理性を判断するための基準を示す「同一労働同一賃金ガイドライン」も改正されます。

入社後間もないパート社員が、正社員との待遇格差について説明を求めることは多くないはずです。しかし、一定の経験を積んだパート社員が、雇用契約の更新にあたって賞与の支給を要求する、あるいは無期転換ルールの適用を目前にして転換後の処遇として退職金制度を要求するなどのケースは想定されます。

過去10年間においてパート・アルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員を含む非正規雇用は約2,000万人まで増加し、労働力全体の約4割を占めます。企業が人件費をできる限り抑える目的で非正規雇用の活用を続ける一方で、その賃金水準は正規雇用に対して約7割弱にとどまり、非正規雇用での勤続年数は長期化しています。

国は、社会保険加入対象の拡大、無期転換ルールの導入、キャリアアップ助成金の支給などによって非正規雇用の待遇改善を後押ししてきました。2020年にはパートタイム・有期雇用労働法を根拠とする「同一労働同一賃金ガイドライン」が策定されましたが、その後の非正規雇用の待遇格差をめぐる判例を踏まえて、法改正と同時に改正されることになりました。

今後、例えば、非正規雇用の働き手が労働基準監督署へ待遇格差についての説明が不十分であると申告した場合、パートタイム・有期雇用労働法にもとづく点検要請が企業に対して行われ、改正された「同一労働同一賃金ガイドライン」に則して雇用管理の改善について助言・指導が行われることが予想されます。

*パートタイム・有期雇用労働法の正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理等の改善に関する法律」といい、中小企業には2021年4月1日に適用されています。雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を掲げる、働き方改革関連法のひとつです。

厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」令和8年4月
https://www.mhlw.go.jp/content/001698010.pdf

厚生労働省「正社員と非正規雇用労働者との間の 不合理な待遇差は禁止されています」令和8年2月
https://www.mhlw.go.jp/content/001508009.pdf

【お伝えしたい内容】

1. 待遇格差の説明義務

従来から、非正規雇用の労働条件通知書では昇給、賞与、退職金の有無、社内相談窓口の設置を明示する必要がありましたが、改正後のパートタイム・有期雇用労働法の施行規則によって、待遇格差について説明を求めることができる旨の明示が追加されます。また、非正規雇用を対象にした就業規則や賃金規程の作成・変更を行うときは、非正規雇用の働き手から意見を聴くよう努めなければなりません。

過去数十年の間、正規雇用を対象に雇用保険、労災保険、健康保険、老齢年金、企業年金などの社会保障制度が拡充されてきました。しかし、前述の通り非正規雇用の労働者数が増加したことで、待遇格差を埋めなければ、社会的な安定性が損なわれいずれ経済成長を阻害すると考えられています。

資本主義の下での雇用関係が成立する以前、家族・親族、部族内の互酬・分業、権力者への貢納・分配、戦争捕虜の強制労働、債務奴隷、年季奉公など、さまざまな形態での労働が行われてきました。非正規雇用の場合、企業が働き手に多くを求めず数年ごとの入れ替えを前提とするのであれば、正規雇用との間に経済合理性にもとづく待遇格差が生じるのは当然とも言えます。

企業は、正規雇用と非正規雇用の間で、仕事の種類と内容、責任の程度などの要素を勘案して、合理的な待遇格差を設定しているはずです。非正規雇用であっても働き手の力量を評価できる場合には、本人との意思疎通を重ねたうえで、契約更新にあたって待遇を引き上げる、さらには正規雇用に登用することもやぶさかではないでしょう。

反面では、非正規雇用の働き手が、正規雇用に伴う労働時間や職務内容の負担を回避するため、あえて正規雇用を選択せずに待遇格差を受け入れている場合もあります。しかし、その多くは不本意な状況にあって、「同一労働同一賃金ガイドライン」に即した待遇格差に疑問を抱きつつも、改善を待つことなく離職してしまうかもしれません。

2. 待遇格差の合理性

「同一労働同一賃金ガイドライン」は、非正規雇用の働き手が同じ会社・事業所に勤務する正社員を比較対象とし、仕事の種類・内容・責任の程度などの要素において、同一である場合には待遇格差がないこと(均等)、同一でない場合には待遇格差のバランスがとれていること(均衡)を評価し、格差の合理性を判断する指針です。

【均等待遇】
①職務内容 ②職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取り扱いを禁止します(パートタイム・有期雇用労働法第9条)。

【均衡待遇】
①職務内容 ②職務内容・配置の変更範囲 ③その他の事情*のうち、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して、不合理な待遇格差を禁止します(パートタイム・有期雇用労働法第8条)。

*その他の事情とは、働き手の持つ力量やその勤務評価などを指し、例えばパート社員が正社員に準じて中核的業務を担い、その成果が会社の業績に影響を与えるなどの場合には、待遇格差を圧縮しつつバランスがとれていること(均衡)が必要になると考えられます。

今回の法改正では、企業は非正規雇用の働き手から説明を求められた際には、正社員との待遇格差を決定するにあたって考慮した事項を、基本給、賞与、その他手当ごとに、働き方の実態に則して説明できることが必要になります。例えば、非正規雇用の働き手が、基本給や賞与について以下の説明に納得できるかどうかです。

基本給パート社員は正社員と比較して仕事の種類と内容は同じで、時間外・休日労働もこなしている点で、実態として責任の程度は変わりません。その上で、正社員は将来的な配置転換によってさまざまな業務を経験し、管理職に登用することが期待されているので、パート社員の基本給に相当程度の差を設けることは合理性があると考えられます。

賞与賞与は業績貢献に対する報償です。パート社員による仕事の種類と内容はいわゆる定型業務であり、会社の業績に直結しません。これに対して、正社員は業績に対する責任を負っています。パート社員が業績に貢献していない訳ではありませんが、業績貢献の度合いからパート社員に賞与を支給しないことにも合理性があります。

3. 派遣労働者の待遇

パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正と同時に、労働者派遣法施行規則が改正され、派遣労働者の雇用契約書においても、待遇格差について説明を求めることができる旨の明示が追加されます。また、「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正では、派遣労働者を対象とした待遇格差の合理性を判断するための基準が示されます。

御社が派遣労働を送り出すケースは限られるかもしれませんが、派遣労働を受け入れることはあるはずです。派遣元は、派遣先均等・均衡方式または労使協定方式にもとづいて派遣労働者の待遇を決定し、派遣対象者の労働条件通知書で、待遇格差について説明を求めることができる旨を明示しなければなりません。

派遣先均等・均衡方式では、派遣先の正社員を比較対象として、派遣先から派遣元へその待遇に関する情報を提供することが義務付けられています。しかしながら、取引関係を慮れば、派遣元はそうした情報提供を求めることなく、厚生労働省が公開する派遣先地域の「一般賃金額(基本給、諸手当、賞与、退職金など)」を比較対象とした労使協定方式を選択することが多いと思われます。

労使協定方式では、派遣元が派遣労働者を対象に「一般賃金額」と同等以上の賃金水準を算定しますが、改正ガイドラインでは正社員との待遇差について不合理かどうかを判断する基準として、賞与、退職金、家族手当、住宅手当、病気休暇、福利厚生、キャリア形成支援なども対象とされました。

また、派遣元は一旦締結した労使協定を放置したまま派遣労働者の待遇を更新することが稀であるという実態を踏まえ、改正ガイドラインでは、派遣先の協力を求めて派遣労働者の職務や成果を評価し、労使協定に即した昇給を実施することで、派遣先での直接雇用などを含め、その待遇の改善を図ることとしています。

厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金改正ポイントのご案内」令和8年4月
https://www.mhlw.go.jp/content/001701327.pdf

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