新着情報

働き手を組み合わせる

働き手を組み合わせる

将来の基幹人材として期待される社員であっても、個人としての豊かな人生を送るために異業種への転職、学位取得、独立起業などの自律的なキャリアアップを求め、積極的な成長意欲を抱えつつ現職での昇格・昇進や終身雇用に拘らないことは珍しくなくなっています。

自分が仕事に使いたい時間と報酬の適切なバランスを求めたい、新しい職場環境や異なる価値観、人間関係のなかで力を試してみたい、本来興味・関心があった職域でより高い専門性を身に付けたいなど、このような人材は良い意味での緊張感を持っているように思います。

他方で、企業は一定水準の人材を採用・育成しつつも、市場環境や事業構造の変化に応じて人材の新陳代謝を図ろうとするようになりました。必ずしもフルタイム正社員の長期雇用を前提とするのではなく、多様な人材と働き方を受け入れることが働き手の確保につながります。

せっかく育てた社員が退職してしまうと投下した育成コストを回収できない、などと嘆いているばかりでは立ち行かなくなります。退職の申し出にあたっては、むしろ新陳代謝の良い機会と捉え、退職理由を無理やり聞き出すことなく気持ちよく送り出すほうが良いはずです。

本号では、働き手を見つけて組み合わせるための施策として、コロナ禍を経て一般化したテレワーク、働き方改革の流れで実質解禁となった副業・兼業、ネットビジネスの拡大によって増加したフリーランスについて、留意すべき点をお伝えいたします。

【お伝えしたい内容】

1. テレワーク

過去のRIMONOレターでは、時間管理、情報セキュリティ、費用負担などのテレワークの課題についてお伝えしたことがあります。

その後、労使双方で経験を積むことによりテレワークをこなしている状況ですが、在宅勤務・サテライト勤務・モバイル勤務などのテレワークの態様によって、どのような就業管理を適用して業務遂行の状況を把握するかが課題になっています。

RIMONOレター「テレワークについて」 2022.10.31
https://rimono.co.jp/2022/10/31/tel_work/

テレワークの許可を受けた社員は、通常勤務と同じく就業規則や雇用契約に定められた始業時刻・終業時刻・休憩時間を守らなければなりません。通勤負担(移動負担)が軽減されて時間を有効活用できる反面、起居寝食等の生活を営み、ときに家族が同居する生活空間では集中力を保つのが困難なこともあります。

テレワークを行う場合でも週1回以上の出勤を求める、定例打合せは対面で行う、ビジネスチャットを駆使する、あるいは私用のための中抜けを認めないなど、きめ細かく規律維持を図る工夫も重ねられていますが、業務遂行の効率を確保するために就業管理の見直しが必要なときもあります。

比較的多く採用されているのは、フレックスタイム制です。基本は1か月の総労働時間について1週間の平均で40時間以下になるよう定めておき、テレワークを行う社員はその枠内で日々の労働時間を調整します。規律維持を求める一方で、通常勤務とは異なる就業環境においても、個人の事情に応じて効率的な業務遂行の実現に配慮することができます。

また、当初からテレワークを前提として遠隔地に居住する人材、柔軟な働き方を望む人材や自律性の高い人材を採用し、折り合いを付けながら組織に組み込む動きが増加しています。テレワークが主体であれば、社員数が増加しても事業拠点の整備などを必要最小限に抑えられる利点もあるかもしれません。

2. 副業・兼業

働き方改革の流れによって過重労働を招くことがないようにという前提での副業・兼業が容認されたことで、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と2018年1月に改訂された厚生労働省のモデル就業規則にて定められました。

現状では社員の副業・兼業を容認する企業の割合が40%近くまで増加しているとの調査もありますが、副業・兼業には過重労働の防止に加えて職務専念、秘密保持、競業避止などをどう確保するかといった対応が必要になるため、企業側では必ずしも積極的になりづらい要素があります。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf

副業・兼業には、自社の社員が他社に雇用されて副業・兼業を行う(送り出し)、あるいは他社の業務委託を受けて副業・兼業を行う(次項で述べる「フリーランス」)、他社の社員を雇用し副業・兼業を行わせる(受け入れ)、さらには、比較的大きな組織に限定されますが、社員が社内の他部門を兼任するなどの形態があります。

労基法第38条1項で、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされている点を踏まえて、所定労働時間については雇用契約が締結された順番で、所定外労働時間についてはそれが実際に行われた順番で通算するという、原則的なルールが示されています(令2.9.1 基発0901第3)。

現実問題として、専門的な能力を持たない人材によって深夜や休日の勤務シフトを補助するかたちでの副業・兼業は、労使双方で一定の需要があります。自社の社員を送り出すときに申請・許可を求めるだけではなく、他社の社員を受け入れることについても、就業規則や勤怠管理など職場単位での準備が必要でしょう。

【スポットワーク】

小売業、飲食業あるいは物流業などでは、単発で短時間の仕事に従事する「スポットワーク」も副業・兼業の選択肢となります。スポットワークはアルバイトよりも日雇いに近く、仲介業者が運営するアプリやウェブサイト上で求人掲載、採用手続、労働時間の管理、賃金の支払いまで完結します。ただし、スポットワーカーを受け入れる現場では、職務遂行や職場秩序の指導の根拠となる簡易的な就業規則を策定しておくことが望ましいと言えます。

一般社団法人スポットワーク協会
https://www.jaswa.or.jp/

3. フリーランス

働き方の最先端は、個人事業主として働く「フリーランス」であるように思います。ネットビジネスの拡大によって増加したフリーランスは数百万人を超え、そのうち半数以上が副業・兼業であると見積もられます。小型車による軽貨物配送、店舗や倉庫の現場補助、デジタルコンテンツの制作などを行う場合もあれば、一般消費者向けに自作のアクセサリーや小物を販売しているフリーランスも存在しています。

しかしながら、フリーランスは往々にして少数の顧客に依存することで、業務委託の内容や納期を反古にされる、様々なかたちで拘束を受ける、報酬の支払いが遅れるなどの不適切な慣行に悩まされていても、雇用関係ではないために労働法で保護されることはありませんでした。

直近の11月1日に施行される「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」では、業務内容および報酬の明示、報酬の支払期日、買いたたきの禁止や契約解除の予告義務、ハラスメント対策、出産・育児・介護の配慮など、独禁法・下請法や労働法を準用した法的規制が導入されることになりました。

業務委託契約の締結にあたっては、他社の仕事を受けさせず専属とする、就業場所や時間を拘束する、指揮命令によって業務の内容や遂行方法を管理する、時間給を基礎として報酬を計算する、服務規律に従わせるなど、働き方の実態が雇用関係と変わらなければ、労働者として保護される(「労働者性」が認められる)ことになります。

厚生労働省「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」2024.7.23 https://www.mhlw.go.jp/content/001278830.pdf

一部の企業では、時間外労働の上限規制や社会保険料のコスト負担を回避するために、社員の雇用契約を業務委託契約に移行する、あるいは巡回業務や深夜時間のシフトなどの労働条件が異なる業務を切り出して業務委託に切り替える、といった動きがありました。仮に偽装請負として労基署に申告された場合に、会社は労基署から行政指導・是正勧告等を受け、労災事故が発生した場合は損害賠償責任を負うリスクがあります。



今回のご案内は以上となりますが、RIMONOでは、テレワーク、副業・兼業、業務委託などに関する労務相談、就業規則(副業・兼業規程)、業務委託契約書などについて支援を提供させていただいております。御社で働き手の確保をするため、このような施策を検討する場合にはご相談ください。

to top