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リテンションについて

リテンションについて

“リテンション(保持)”とは、在籍社員の離職を防ぎ長期間活躍してもらうための人事施策の組み合わせです。

定年まで一つの企業で働き続ける終身雇用の概念が弱まり、若年層の早期転職が多くなっていることも、リテンションが注目される背景の一つであるといえます。

近年の人手不足が続いている状況では、とくに優秀な社員にとって、現職での処遇や将来性、仕事を通じた自己実現、あるいはワークライフバランスを意識した先に、転職活動の扉が開かれている点で様相が異なります。

優秀な社員の離職が発生すれば、離職者の業務を引継ぐ、予定外の補充採用を実施する、採用後の受入教育にあたる、といった直接・間接のコスト負担が発生するとともに、職場組織の動揺、企業機密の漏洩、既存顧客の流出などのリスクにつながる場合があります。

離職を思いとどまらせる対応としては、報酬といった金銭面の見直しや役職への登用がまず考えられます。

しかし、一旦離職の意思を固めた社員は転職活動に着手しつつ情報収集を進めることで新たなキャリアに目が向いているため、翻意させることはなかなか期待できません。

基本的には、社員がモチベーションを維持し長期にわたって活躍するための人事施策の組み合わせを更新しておくこと、とくに若年層の人材にとって関心の高い、安心して働ける良好な就業環境を維持することが重要になっています。

なお、最も多い離職理由は職場の人間関係だ、ともいわれています。この点についてはRIMONOレター「採用・定着のための職場作り」および(同)続編をご覧ください。

2022.12.08  https://rimono.co.jp/2022/12/08/rc_fix/
2022.12.26  https://rimono.co.jp/2022/12/26/rc_fix_02/

本号では、企業理念や経営方針を浸透させて社員を囲い込むというような施策ではなく、社員にとっての実益を伴う施策を紹介いたします。

いずれの施策に対しても一定の導入費用が必要になりますが、離職の抑制を通じて組織・事業の安定やコスト負担の緩和といった還元・回収を見込めると考えられます。

  1. 短時間正社員とは?
  2. 企業年金制度について
  3. インフレ手当

1. 短時間正社員とは?

働き方改革で拡充された育児・介護等の休業制度や、コロナ禍に導入されたフレックスタイム、テレワークなどの柔軟な勤務制度は、様々な事情を抱えて働く社員のワークライフバランスを実現する効果的なリテンションと言えます。

この延長線上で従来型の正社員と比べ、会社と社員が職務内容・勤務地・労働時間などを限定し合意選択できる「限定正社員」という制度があります。最近注目されている週休3日制についても、この区分に当てはめることができます。

中小企業にとっては、労働時間を限定した短時間正社員制度が適合することが多いかもしれません。短時間正社員制度は、正社員と同等の意欲や能力があるものの、個人のライフスタイルや家庭の事情でフルタイムの正社員よりも勤務時間や勤務日数を短くしながら活躍してもらうための仕組みです。

本来であれば、フルタイムの正社員として活躍して欲しい優秀な人材であっても、例えば本人が独自のキャリアパスを計画し、資格取得の学習や社会貢献活動の兼業を行うなどの理由から、短時間正社員として受け入れる場合もあると思います。

短時間正社員には雇用期間の定めはなく、時間あたりの賃金・賞与・退職金等の支給、社会保険の適用などが同等という意味では「正社員」であり、一定レベルの役職や専門業務を担当することも可能です。

フルタイムの正社員から短時間正社員へ、優秀なパートタイマーを短時間正社員へ、各々転換するといったリテンションが考えられるほか、新たに短時間正社員を募集することにより、期待以上の優秀な人材にあたることがあるかもしれません。

厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/tayou/tanjikan/outline/index.html

2. 企業年金制度

退職金は法令によって定められた制度ではなく、会社独自で導入する制度であるため、必ずしもすべての会社が退職金を支給するわけではありません。

しかし、退職金制度は優秀な人材の長期的な活躍を支え、優秀な人材を採用に結びつけるリテンションの仕組みです。

退職金制度は、会社が勤続年数に応じて退職一時金や企業年金の原資を蓄えて支給する、 あるいは中退共などの共済制度に加入する場合が一般的ですが、近年では、あらかじめ決められた掛金を労使双方で負担しつつ費用処理できる企業年金(退職金を分割して一定期間に渡って支給する)が増加しています。

* 企業年金制度の2タイプ(概略)

  • ① 確定給付企業年金(DB)
    : 退職金の金額をあらかじめ設定し、掛金を会社と社員が共同で拠出して運用する
  • ② 企業型確定拠出年金(企業型DC)
    : 会社が毎月掛金を拠出し、社員が選択した投資商品にもとづいて運用する

とくに企業型DCでは、社員が60歳以降に定年を迎えると、それまでに積立てた年金資産を一時金または退職年金として受け取ります。社員が自分の判断で資産運用をするため、運用成績によって受給金額が変わりますが、会社は積立不足が発生しても補填する必要はありません。

例えば、上位職層の管理職や専門職を企業型DCに加入させることによって、基幹人材のリテンションを図るというように活用することができます。

3. インフレ手当

直近の統計調査による実質賃金は、前年比2.3%減少しており(19か月連続の減少)、物価上昇に賃金の伸びが追いついていない状態が続いています。

厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年10月分結果確報
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/2310r/2310r.html

ご承知のとおり、一昨年以来、基本給の水準引上げ(ベア)とは別に、インフレ手当の支給が検討・議論されています。

物価上昇は企業の業績を同時に圧迫しているため、従業員や家族の不安感を和らげるための経営対策が望ましくはあっても、原資を必要とするインフレ手当の支給には踏み切れない場合があります。

いち早くインフレ手当の支給に踏み切った他社事例では月額数千円程度であるようですが、急激な物価上昇に対する家計支援にあたっては、賃金の生活給的な要素と多様化したライフスタイルによる家計との間に、境界線を引くことがむずかしくなっています。インフレ手当を支給する余裕のない企業では、従業員や家族の節約を通じて吸収しているのが実態であると思います。

こうした状況のなかで、言わば現物支給の福利厚生制度として、会社が従業員のランチタイムに食事補助を提供する方法があります。時間、場所や提供メニューの限られた社員食堂や提携飲食店ではなく、就業場所近くにある全国展開のコンビニや飲食チェーンで利用できる電子マネーを配付するサービスです。

チケットレストラン
https://edenred.jp/ticketrestaurant/

会社の食事補助によって従業員が食べたいものを選べるという、わかりやすく、毎日メリットが実感できる手当であり、在宅勤務あるいは深夜勤務でも公平に使えます。電子マネーの配付が給与所得にならないよう非課税枠での補助額上限を設定することも可能で、飲食(酒、タバコを含まず)に用途を限定するため、換金性はありません。

地味なリテンションですが、従業員の家計支援を図る施策として理解・共感を得られるのではないでしょうか。

上記にご案内した各施策についての検討・実行など、ご支援させていただけることがございましたらご相談ください。

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